なめている懸賞

落語にでて来る間抜けな男が、人のまねをして「なぞ」を言いかける。そのなぞが間放けきわまりないもので、――たとえば、足が四本ある動物で、頭に角がある。そうしてモウとなく動物はなんだ、と聞く。相手が牛だと符えると、エライなと感心して、かけた金をとられてしまう。足が四本ある動物で、頭にたてがみがある。そうして、ヒンとなく動物はなんだ、と聞く。相手は馬だと答えると、またエライなと感心して、またまたかけた金を持っていかれてしまう。

こんなバカバカしい問題を、会をかけてまであてきせようというのだから、間抜けの標本のような男だが、この男にそっくりそのままの、間抜けきわまりない出題者が、いまの世の中にもいるのだからふしぎである。民放のテレビなどのスポンサーがそれだ。
私が偶然みたのは、先場所十四日目の大相撲の中継の時だった。その中継放送の初めから、あとに五百万円の懸賞があると、しきりに宣伝をしていたので、相撲の勝ち負けをあてさせる懸賞だとすると、きょうの取組にかけたのでは、答えを投書させる時間がない。

どんな風にやるのだろうかと、その趣向に多少の興味を持ってみていた。するとやがて柏戸対大鵬の取組となり、お待ちかねの懸賞はこの取組の勝ち力士をあてるのだという。やがて耐力士が立ち上がって柏戸が寄り倒しで大鵬に勝った。すると、いまの取組の勝ち力士は誰か、その名をハガキに書いて送れ、というのである。角のある凶つ足の動物でモウとなくのは何だというのよりも、もっとバカバカしい問題だ。わかるわからないの問題でもなければ、あたるあたらないの問題でもない。バカバカししと言って、これほどパカパカしい問題はない。正解者多数につきくじびきで、次の十名のかたに賞金をお送りします、ということになるのだろうが、こんな問題に、まじめに「柏戸」と書いて、ハガキを投ずる視聴者がいるのだろうか。パカ扱いといって、これほどひどいバカ級いはない。
落語の与太郎は本人が間伐けで、大まじめでバカげた質問をしてしるのだが、テレビのスポンサーは間抜けではないはずだから、結局、こんなバカげた問題を出して、あててみろと言われる視聴者が、パカ扱いされているわけである。ナメラレるといって、こんなひどいナメラレかたもないだろう。しかし世間は広いから、パカ扱いされていあとも思わずに、鈴栄をなめなめ、かしわどと引Hいて、ハガキを出す人も多いのだろう。
こういう懸賞は、目的は実はほかにあって、集まってくるハガキの数によって、スポンサーは、その買った番組の、視聴状況をはかろうという約けなのだろう。それならいっそのこと、わが社の提供による相撲中継をみた人は「みた」とハガキに書いて、送ってくれ、送ってくれた人には薄謝を、または記念品をさし上げます、とやった方が、いっそスッキリしていていいだろう。〈三六・六〉

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